育児にとって気がかりなことのひとつが「こどものむし歯（う蝕）」。
食器の使いまわしにより、大人からこどもへ、むし歯菌の感染が起こるので気を付けるように…と子育て本などにもよく書かれていましたが、どうやら必ずしもそうとは言い切れない、という情報が日本口腔衛生学会から出されました。
以前から、親から子どもへのう蝕原因菌の感染を予防するために、親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっています。しかし、食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません。（省略）
親からの口腔細菌感染は食器の共有の前から起こっている
最近の研究で、生後4か月に母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認されています[2]。食器の共有は離乳食開始時期の生後5～6か月頃から始まりますが、それ以前から親から子どもに口腔細菌は感染しているのです。日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触しますので、食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。
令和5年8月31日 一般社団法人日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20230901.pdf
驚いたことが、食器の共有以前に「スキンシップにより子どもに口腔細菌は感染している」ということ。
食器の共有（自身が使っていた箸でごはんを取り分けるなど）は、口腔細菌の感染の観点からは、そんなに気にしなくてもよい＊、ということは乳幼児を持つ保護者としてはありがたいニュースですね…。
ただ裏を返せば、食事とは関係なく常に口腔細菌が感染する事態は発生している、ということ。大人の原因菌保菌が少なければ、子どもへの感染リスクも下がるとみられるため、大人の口腔ケアは子どものためにも気を付ける必要がありそうです。
むし歯予防も基本は「歯みがき」「口腔ケア」が大事であることは、歯周病予防と変わりませんね。
また、保護者自身も適切な口腔ケアを行うことで、子どもへの感染も少なくなるので、日々のケアは怠らず、家族全員でケアを行う習慣・歯科受診を定期的に行うことが必要ですね。
＊ただし、胃がんの原因となる「ピロリ菌」は、感染は経口と言われており、胃酸分泌が十分でない乳幼児は感染リスクが高い状況です。大人は胃がんリスク検査もお忘れなく！